神奈川県から政令市への財源と権限の移譲を伴う大都市制度「特別自治市構想」を巡り、黒岩祐治知事と県内三政令市の市長による懇談会が六日、横浜市役所であった。横浜、川崎、相模原の三市長は、特別自治市に移行すれば、少子高齢化が進む中でも多様化する住民ニーズに効率的に応えられるとの意義を強調したが、黒岩知事は財源が減って他の市町村への行政サービスに影響が出るなどの懸念を示し、議論は平行線だった。(志村彰太)
福田紀彦・川崎市長は、個別の権限ごとに議論して移譲する現行の仕組みでは「全然進まない」と問題提起。山中竹春・横浜市長は「特別自治市にできることはやってもらう方が、県はその他の市町村の支援に回れる」と述べ、互いにメリットがあるとした。本村賢太郎・相模原市長は「特別自治市を法制度化しても、すぐに移行するわけではない」と、知事に理解を求めた。
一方、黒岩知事は「住民目線から見て、特別自治市を法制度化するのは妥当ではない」と反対。福田市長が「法制度化されていない段階で、結論づけられているのは違和感がある」と反論したが、議論はそれ以上交わらなかった。今後、定期的に三市長と知事が協議することでは合意した。
◆利点示し 丁寧な説明を
<解説> 政令市は、県から事実上独立する特別自治市構想で「二重行政」を解消し、効率化と住民ニーズに即した行政運営ができるとうたう。一方、県は既存の制度でも二重行政は解決でき、むしろ県が政令市の住民に関与しなくなることで、住民ニーズを満たしにくくなると主張する。
構想を先導してきた横浜市が昨年改訂した「特別自治市大綱」では、人口減や高齢化を背景に財政面の課題を強調し、特別自治市移行の必要性を説く。しかし、構想を読んでも「市職員が仕事しやすくなる」以上の意義を見いだしづらい。移行すると歳入はいくら増え、税などの負担は減るのか、中学校給食などの行政サービスは向上するのかなど、具体的な市民生活のメリットに関する説明が不足しているためではないか。
構想が実現した場合、新たに生じる懸念もある。現在の市長・市議会と知事・県議会という「二層制」の地方自治は、互いの仕事を補完、けん制し合う点に特徴がある。独立して「一層制」になれば、仮に市長が民意を離れて暴走し、市議会が制止できず、直近で地方選もない場合、誰も止めることができなくなる。
こうした懸念には、区長を公選制にするか、署名が集まれば住民投票を必ず実施する「常設型住民投票条例」などにより、民意をくみ取る機会を増やすことが解決策として考えられる。だが、横浜市の大綱によると区長は公選ではなく、同条例を設けている県内政令市は川崎市のみだ。
インフラの老朽化も進む中、行政の効率化は不可欠だが、打開策は特別自治市移行しかないのか。権限と財源を県にまとめる広域化の方が適しているのではないか、という疑問もある。
六日の懇談会で、福田紀彦・川崎市長は「政令市に住んでいて県の存在を意識する瞬間は、ほとんどない」と述べた。言い換えれば、県と政令市があることで不利益を実感する機会も少ない。政令市には、市民にとってどんな利点があるのかを具体的に示し、懸念にも丁寧に答える姿勢が求められる。(志村彰太)
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