笑う猫と話したり、自分が流した涙の池でおぼれたり――。奇想天外な体験をする少女の物語『不思議の国のアリス』は、世代を超え愛され続けてきました。19世紀のイギリスで誕生して約160年、映画、音楽、舞台作品、美術など芸術表現のモチーフにもなっています。そんな「アリス」をたどる大規模展「特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」(朝日新聞社など主催)が10月10日まで東京・六本木で開催中と聞き、幼い頃アリスにはまった私は出かけてみました。特別に同行してくれたアリスに扮したモデルさんと足を踏み入れると、そこはまさに「不思議の国」。記事の末尾には、オリジナルグッズが当たるプレゼントもご用意しました。(文・写真:有山佑美子)
はじまりは、知人の娘に語ったおとぎ話

ルイス・キャロル(本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン、1832~1898)はオックスフォード大学で教えた数学者であり、作家、写真家でもありました。『不思議の国のアリス』が刊行されたのは1865年のこと。知人の娘であるリドゥル家の3姉妹に即興で語ったおとぎ話がはじまりでした。3姉妹の次女アリスが主人公のきっかけとなったのです。
本展は英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館から始まった国際巡回展です。『不思議の国のアリス』や続編の『鏡の国のアリス』(1871年)の誕生から、関連する作品までさまざまな角度から取り上げています。
写真を撮りたくなる空間演出
みどころの一つは、「アリス」の物語に登場する世界を空間演出したコーナー。会場のところどころにあり、このコーナーでは写真も撮れます。


物語の冒頭でウサギの穴に落ちたアリスが迷い込んだ「扉だらけの部屋」を模したスペース。たくさんの扉の中から、開けられる扉をアリスは探します。エプロンドレスでコスプレしたモデルさんがポーズをとってくれると、まるでアリスの世界に迷い込んでいるよう。気分が高まります。
真っ黒な巨木を模した展示物に、にやりと笑う「チェシャー猫」がだんだん浮かび上がってくる仕掛けも。目がぐるぐる回り、グリーンやピンクに顔の色が次々変わったかと思うと、姿は次第に消え、口だけが残るのです。

いつまでも終わらない「狂ったお茶会」の場面を模した映像インスタレーションも。プロジェクションマッピングの効果でテーブルクロス、皿、カップの色や模様がどんどん変わって見え、幻想的です。ここでは動画を撮ることもできます。

舞台衣装やファッションも展示
アリスの世界は映画や舞台、音楽、ファッションなどにも広がっていきました。私がアリスに強くひかれたきっかけも、小学生の頃に見たディズニー映画でした。ふわふわの金髪とパフスリーブのエプロンドレス姿のアリスがウサギや花、トランプのカードと会話し不思議の国を旅するファンタジーに魅了されてしまいました。
本展では「アリスファッション」も見応えたっぷりです。特に目を引いたのは真っ赤な舞台衣装。英国ロイヤル・バレエ団の舞台「不思議の国のアリス」で使われた、ハートのクイーンの衣装です。

アリスの物語をモチーフにしたミュージカル『ワンダー・ドット・ランド』の衣装も。

日本の「パンク・ロリータ」など、アリスの衣装に影響を受けたとされるファッションも紹介されています。


のアンサンブル(左)
「自分は何者?」と考え続けるアリス
アニメーションからアリスにはまった私ですが、やがて小説版アリスにも夢中になりました。繰り返し読むうちに、キャロルが描いたストーリーのナンセンスな部分や、登場するキャラクターの行動やそれに対するアリスの対応が実にシュールであることに気づきました。
たとえば『鏡の国のアリス』の一シーン。切符売り場のない場所から汽車に乗ったアリスは、切符を持っていなかったため車掌にとがめられます。車掌は至近距離から望遠鏡で、顕微鏡で、オペラグラスでアリスを眺めます。最後は「乗り間違えですよ」と去って行くのですが、7歳のアリスは「これじゃあ話してもしかたない」などと冷静なのです。この場面は、本展でも原作の挿絵が展示されています。「へんてこりん」な世界のアリスに「うんうん」と同調していた昔の自分を改めて思い出しました。
会場には時計や万華鏡など、物語が誕生したビクトリア朝の時代の品々も展示されています。キャロルは人々の関心を集めていた話題を、皮肉も込めて物語に取り入れたとされます。ティーポットもありました。「狂ったお茶会」の場面は、流行していた堅苦しいティーパーティーの慣習をパロディー化したそう。
キャロルのへんてこりんな世界の中で、幼いアリスは急に体が巨大化したり、縮んだり、進みたい方向に体が動かなかったり、自分を自分でコントロールできないことに戸惑います。訪ねる先々で「おまえは何者か」と聞かれるため、「自分は何者か」と自問自答することにもなります。

不可解な世界になじもうとするアリスですが、登場するキャラクターはどこか攻撃的。『不思議の国のアリス』のラストでは、アリスはハートのクイーンから身に覚えのない理由で死刑を命じられます。そんなクイーンの理不尽さをアリスは一喝、すかっとする場面でした。
作品の中のアリスと同じ年くらいの時にアリスに初めて出会い、だいぶ経ちました。アリスが自問していた「自分は何者か」は、大人になった今もきちんと説明するのは難しい気がしますし、いつの時代にも多くの人々が考えてきたことなのだと思います。作品の世界観をたっぷり味わえる展覧会場で、その魅力を改めて思い出しました。
特別展アリス へんてこりん、へんてこりんな世界
10月10日(月)まで
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階の森アーツセンターギャラリー。
午前10時~午後8時(月・火・水曜は午後6時まで。ただし9月19日と10月10日は午後8時まで)。入館は閉館の30分前まで。会期中無休
平日一般2100円、大学・専門学校生1500円、高校生1300円、小中学生700円(土日祝は各200円増し)
問い合わせ ハローダイヤル050・5541・8699
https://alice.exhibit.jp/
プレゼント応募要項

■締め切り: 2022年9月30日(木)23時59分
■賞品:「特別展アリス」オリジナルポストカード5枚組
■当選者: 5名(抽選)
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