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大坂の豪商「加島屋」の歩みをたどる特別展…NHK連続テレビ小説「あさが来た」ヒロインのモデルの嫁ぎ先 - 読売新聞オンライン

 江戸時代の大坂を代表する豪商の一つ「 加島屋かじまや 」にまつわる大量の史料を対象に、10年がかりで行われた研究チームの調査結果がまとまり、大名相手の融資「大名貸し」で発展した事業の歩みや、創業した広岡家の暮らしぶりが明らかになった。大阪くらしの今昔館(大阪市北区)で開かれている特別展で、その一端を示す絵図や工芸品計約80点が紹介されている。(布施勇如)
大名や米仲買に融資

 江戸期の大坂は経済の中心地で、各地からの年貢米が取引された。堂島米市場では、落札した米仲買に大名が「米切手」=写真<1>=を発行。現物との交換を約束する証券だが、金融商品としても売買された。米仲買の加島屋は次第に、米切手を担保として同業者に融資する業務と大名貸しを事業の柱に据えていった。

本宅には「三幅対」の掛け軸
 加島屋本宅は、大同生命保険本社ビル(大阪市西区)が立っている土佐堀川に面した一画にあった。敷地は約1500平方メートル。1840年作成の絵図には、藩の役人を迎えたとみられる座敷や5か所の床の間、歴代当主が茶道に打ち込んだ茶室などの間取りが記されている。

 本宅の幅の広い床の間には、3幅1組の掛け軸「 三幅対さんぷくつい 」がふさわしかった。会場では、昭和初期に手放した1組の名品のうち、模写で残したウズラとセキレイの図=写真<2>=や、当主が正月用に墨で描いた力強い筆致の絵=写真<3>=を展示。加島屋の最盛期だった江戸後期に作られたらしい大型のひな飾り=写真<4>=も目を引く。

 1871年の廃藩置県で大名貸しという事業の柱を失い、経営危機に直面すると、8代目の次男の妻で、NHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015~16年放送)のヒロインのモデルとなった広岡浅子が立て直しに奔走。邸宅や所蔵していた大量の美術品を売却し、1888年には加島銀行の設立に関わった。浅子が自作の和歌を書いた色紙や、制作を依頼した竹と鶏の図も出展されている。

 調査の対象となった史料は、加島屋の流れをくむ大同生命保険が所蔵してきた約2500点と、「あさが来た」がきっかけとなって奈良県の子孫宅で見つかった約2万点。経済、建築、絵画の専門家らによる考証が進められてきた。

 8月11日には、研究成果の報告会があり、市民ら約150人が参加。高槻泰郎・神戸大准教授(日本経済史)は「加島屋は単なる大金持ちではなく、藩に助言し、幕府の政策にも関わっていた。文化、宗教面を含め、社会に期待された役割と影響力を持っていた」と話した。

特別展は26日まで
 特別展「商都大坂の豪商・加島屋」は26日まで(火曜休館)。入場料は一般400円、高校・大学生300円。問い合わせは、大阪くらしの今昔館(06・6242・1170)へ。

加島屋
 江戸初期の創業とされる豪商・広岡家の屋号。当主は代々「加島屋久右衛門」の名を継いだ。4代目は、1730年に幕府公認で発足し「世界初の組織的な先物取引所」とも呼ばれる堂島米市場の初代頭取役を務めた。

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