前回の記事(https://netkeizai.com/articles/detail/2226)では、原価抑制につながるはずの大ロット発注が実は落とし穴だらけという点についてご説明しました。今回は、EC事業者が目を背けがちな人口動態と個人消費の不都合な関係についてご紹介します。
医療・介護の支出増加のインパクト
少しスケールが大きな話になりますが、皆さんは日本の人口動態について考えたことはありますか? 言うまでもなく日本は高齢化が世界一進んだ国であり、合計特殊出生率も低いですよね。
この事が小売業界に与える影響が、実は甚大なのです。2030年の日本の人口は最悪のケースで1億1652万人と推計されています。これは、2015年の1億2709万人と比較して九州全体の人口に匹敵する1057万人もの減少となります(出所:国立社会保障・人口問題研究所)。
しかも、2030年には全人口の3分の1が65歳以上の高齢者になり、個人消費を主に生み出す生産年齢人口(現役世代)は全体の58.5%まで減ってしまいます。
俗に言う「2030年問題」が小売業と密接にかかわることがお分かりいただけたかと思います。
蛇足ですが、人口動態は超長期の出生率や死亡率を基に推計されるため、非常に信頼度が高い予測と言われています。
ただし、「2030年までの9年間余りで対応すれば良い」と考えるのは危険です。その前の2024~25年が転機の年となるからです。どういうことかというと、2024年には団塊の世代(第1次ベビーブーム世代)が全員75歳以上の後期高齢者になります。すると、医療や介護などの社会保障費用(社会保障給付費)が急増するのが確実なのです。
2018年の医療・介護給付費は計49.9兆円でした。これが2025年には27%も増加して計63.3兆円となり、2040年には92.9兆円まで膨れ上がります(内閣府推計)。2019年の小売市場全体の規模が145兆円でしたから、医療・介護費用という”市場”がいかに大きいマーケットか想像できると思います。そして、医療・介護市場は私たちが支払う社会保険料と公費(税金)で賄われています。
政府は現役世代の負担増は限定的と試算していますが、それは2014~2015年頃の好景気並みの経済成長が続くとの仮定に基づいた数字です。新型コロナウイルス危機の影響もあって経済成長が止まった今、増税や社会保険料引き上げなど、現役世代の負担が重くなるのは避けられないでしょう。
そうなると、個人消費に回せる可処分所得が減ってしまうのは明らかです。
個人消費力は既に低下が始まっている
国内小売市場を支えるのは個人消費ですが、全ての年代で世帯当たりの消費額は右肩下がりになっています。
5年おきに行われる総務省の全国消費実態調査という統計があり、2014年と1999年を比較したのが次のグラフです。2人以上世帯の月間消費支出額を表しています。
消費支出とは、個人が本人と家族の生活を維持するために自由に消費する支出を指します(税金や社会保険料は「非消費支出」)。棒グラフは5歳ごとの年代別に並んでいますが、15年間で全ての年代で消費支出が減少しています。特に「45~49歳」と「40~44歳」「50~54歳」の落ち込みが最も大きく、それぞれ約62,000円(15.9%)、約46,000円(13.5%)、約55,000円(13.2%)減少しています。
しかも、この「45~49歳」と「40~44歳」は本来なら収入が増えて2024年以降の社会保障制度を支える主役となるべき世代です。ところが彼らは既に消費力が減退しているうえ、社会保障関連の支出が重くのしかかってきます。これから個人消費がさらに減退する可能性は高いといえるでしょう。
縮小市場で売上を追うと過度な価格競争に
実際に国内小売市場は既に頭打ち感がみられます。2019年の小売業販売額は145.0兆円で、2018年(144.9兆円)からほぼ横ばいでした(経済産業省の商業動態統計)。2017年は142.5兆円、2016年は139.8兆円でしたから、2018年を境にそれまでの市場拡大の潮目が明らかに変わったと言えるでしょう。
拡大市場では、売上を第一に追いかけることに意義があります。顧客の奪い合いになりにくいからです。ところが縮小市場では売上にこだわると、顧客の奪い合いによる過度な価格競争になり、資本力がある大企業しか生き残れなくなるのです。
「縮小市場で価格競争になっても、原価率を下げれば粗利は確保できる」と考える方がいらっしゃるかもしれません。ただ、これは半分は正しく、半分は間違っています。
販売力を超えて大量発注すれば、1個あたりの商品原価は下がります。しかし、売れ残った商品が棚卸資産(在庫)となって粗利を削ることになるのです。
どうしてかというと、在庫は毎年価値が下がるので、この目減り分は商品評価損(評価減)としてPLの商品原価に加算されるからです(下図)。しかも、在庫を思うように消化できなくて値引き販売が多くなると、売上高が思うように伸びません。そうすることによっても原価率は上がります。
整理すると、粗利を決めるのは原価率であり、その構成要素は商品原価と値引き、評価減の3つです。商品原価だけ下げても値引きや評価減を抑制できなければ元も子もありません。
では、粗利を第一にした経営はどのように実践すれば良いのでしょうか。そのカギは、「在庫の質」を可視化することにあります。「在庫の質」の可視化とは、SKU(品番)ごとの売れ残りリスクと売上への貢献度を数値化することを指します。これができれば、SKUごとに適切な販促を実行することで、できるだけ値引きせずに販売できるようになるばかりか、気づかぬうちに在庫リスクが悪化して評価損が発生することも抑えられるようになります。
フルカイテンは、「棚卸資産の質」を可視化するためのツールとして、クラウドサービス(SaaS)『FULL KAITEN』を開発し、小売企業などに提供しています。大手アパレルやメーカー、楽天ショップオブザイヤー受賞店舗などEC・実店舗を問わずご利用いただき、粗利増加と在庫削減の両立という価値を提供しています。
事業規模がある程度の大きさになってSKU数が多くなると、「FULL KAITEN」のようなツールは大きな助けになります。ご興味をお持ちの方は是非お問い合わせください。
【著者プロフィール】
フルカイテン株式会社
代表取締役 瀬川直寛(セガワ・ナオヒロ)
売上増加と在庫削減の両立を実現するシステム「FULL KAITEN」を開発し、クラウドサービスとして大手小売企業や楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤー受賞店舗などに提供。 EC経営者として倒産危機を3度乗り越えた経験を踏まえた理論・考え方は、多くの企業から高く評価されており、「FULL KAITEN」にも多くの問い合わせが寄せられている。
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December 01, 2020 at 06:00AM
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【コロナで顕在化した在庫問題!売上を増やし在庫を減らす新手法とは?】第8回「人口動態を直視すれば『売上第一』から『粗利第一』への転換は必須」 - マイナビニュース
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