世界に約2万6000頭いると推定されるホッキョクグマは、陸生動物ではあるものの、泳ぎが得意で、ほぼ海洋生物だけを食べて生きている。海氷の割れ目や穴のそばで待ち伏せして、呼吸するために水面に現れたアザラシを捕食する。つまり、ホッキョクグマにとって海氷は生きるためになくてはならないものと言える。(参考記事:「動物大図鑑:ホッキョクグマ」)
ところが、海氷の季節が1年のうち4カ月もないグリーンランドの南東部に、なぜか数百頭のホッキョクグマからなる小さな集団がすみ着いていることがはじめて明らかになり、6月16日付けで学術誌「Science」に発表された。「ホッキョクグマが生き延びるには、4カ月は短すぎます」と、論文の筆頭著者であるクリスティン・ライドラ氏は語る。
この地域に生息するホッキョクグマのDNAをライドラ氏の研究チームが調べたところ、他の集団と遺伝的・地理的に大きく異なっていた。あまりに特別なため、研究チームはこの集団を20番目の下位個体群(分集団)として認定することを提案している。また、発信器付きの首輪を装着した27頭のクマの追跡データから、南東部のクマたちはこれまで考えられていたよりも3カ月も長く、海氷なしで生存できることも明らかになった。
しかし、これを見てホッキョクグマは思ったよりも気候変動に強いと結論付けるのは気が早すぎると、論文の著者らは警告している。グリーンランド南東部では、陸の氷河からの氷が海氷の分を穴埋めしており、そうした場所が狩りをするホッキョクグマの最後のよりどころになりうるということだ。
北緯64度で分断
米ワシントン大学の准教授のライドラ氏と、グリーンランド自然資源研究所のフェルナンド・ウガルテ氏、その他国際的な研究者は、ホッキョクグマの過去36年分の移動データとDNAサンプルを調べた結果、驚いたことに、北緯64度を境にグリーンランド東部の集団が北と南に完全に分かれていた。分析した期間に、北と南の集団がそれぞれ北緯64度を越えて移動したことはなく、集団同士が交わることもなかった。
グリーンランド北東部にすむホッキョクグマは、海氷の上を一日平均10キロ移動するが、南東部のホッキョクグマは氷河によって削り取られたフィヨルドの湾のなかにとどまり、海岸からあまり遠くまで離れることはない。夏の間に氷河から海へ流れ出た氷は、無数の細かい氷片となって海面に浮遊する。この状態を、科学者たちは氷河メランジェと呼ぶ。これらの氷片が密集した上を歩いて、ホッキョクグマは狩りをする。
ライドラ氏の調査によると、一部のホッキョクグマはフィヨルドの一つか二つの湾内に何年もとどまっているという。その行動範囲はわずか13~15平方キロメートル。年間1500キロ以上移動する北東部の集団と比べると切手のような狭さだ。
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