DeNAドラフト1位の松尾汐恩捕手(18)と日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏(52)が、新旧高卒ドラフト1位捕手対談を行った。88年ドラフト1位で大洋(現DeNA)に入団し、球史に名を刻んだ谷繁氏から松尾へ数々の金言を伝授。自身の「しくじり」にも触れながら、「技術論」、「プロの心得」など硬軟織り交ぜた“配球”でトークを繰り広げた。前後編でお届けします。【取材・構成=久保賢吾】
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先に部屋に入った松尾は心臓をバクバクさせながら、谷繁氏を直立不動で出迎えた。球団史上、わずか2人の高卒ドラ1捕手が初対面した。
谷繁氏 思ったよりちょっと細いかなという印象と顔は今風というか、キリッとしていいですね。
松尾 実際会ってみると体も大きいですし、少しでも近づきたいなとあらためて感じました。
谷繁氏は、江の川(現石見智翠館)時代に2度甲子園に出場。広島に入団した関東高(現聖徳学園)の江藤智とともに「東の江藤、西の谷繁」と評された。松尾は2年春から4季連続で甲子園に出場し、3年春のセンバツでは優勝。甲子園通算5本塁打を放った。
谷繁氏 すごいね!5本でしょ!? 甲子園では何試合やったの?
松尾 (指で数えながら)11試合してます。
谷繁氏 11試合で!? オレより全然上じゃん。オレはゼロだもん(笑い)
空気が少し和むと、谷繁氏はプロ1年目の「しくじり」を語り始めた。
谷繁氏 正直、根拠のない自信がものすごいあったんですよ。ある程度、試合に出たら「レギュラーを取れる」みたいな。それが僕の成長をかなり止めてたなと思うので、松尾君にはしてほしくないんですよ。
深くうなずく松尾を見つめながら、谷繁氏はさらに言葉を続けた。
谷繁氏 周りを見ながら生活してほしいですね。「あの人はどういう練習してるのかな?」とか、とにかく周りをよく見る。それもあまりわからないように。キャッチャーらしく、チラチラ自分の視野を広げて、見ていく。その中で気付いたことを書いておく。
実際、対談中も谷繁氏は至る所に目を配った。松尾が書いたサインには「誰が見てもすぐに松尾のサインと分かるものにした方がいい」と的確に助言した。
松尾 僕も人の何かを見るっていうことが好きなので、そういったこともこれからも続けていきたいと思います。
後輩の松尾を絶妙に“リード”しながら、助言には“緩急”を織り交ぜた。
谷繁氏 たぶん、もてると思うんだよね。オレは最初、もてなかったから良かったんだけど、どこで格好をつけるかだと思うんですよ。身なりでつけるのか、自分の実績、成績でつけるのか。成績が出てきたら身なりもちゃんとするようになるし、どんな格好をしても格好良く見えるから。
高校時代から注目度が高く、国体では客席にカメラを構えた女性ファンが殺到。インターネットの検索ワードに「イケメン」と出たほどで、谷繁氏の愛情あふれる助言にもニコッと笑った。
先輩に導かれながら、松尾も27年の現役生活を送った谷繁氏に聞きたかった質問をぶつけた。
松尾 自分の中で毎日やってきたこと、ルーティンはあったのですか?
谷繁氏 ルーティンは年齢によって変化していって、1年目は正直に言うと遊びの方が大半を占めてたから。田舎から出てきて、見るものが新鮮で楽しいことばかり。「どこに遊びにいこうかな」とか、そんなことばっかり考えてたからダメだった。その辺はうまくやってほしいですね。
松尾は目を輝かせながら「はい」とうなずき、数々の金言を心に刻んでいった。もうすぐ迎えるプロ1年目。谷繁氏は開幕1軍入りし、80試合に出場した。
谷繁氏 出たっていうより、出してもらってたっていう感覚しかないからね。チーム事情もあって、前年のレギュラーだった若菜さんが(日本ハムに)トレードでいなくなったんです。松尾君も嶺井がFAでソフトバンクに移籍して、似たような感じだよね。
松尾 (80試合を)超えられるように頑張りたいです。
谷繁氏 超えられるでしょ。打率は1割7分5厘でホームランも3本だよ。今、比較するとなると松川(ロッテ)だよね。76試合の出場で打率もオレより低いし(1割7分3厘)、ホームランもゼロ。ということはオレの方が良かったんだなぁ(笑い)。
笑い声とともに、和やかな空気が部屋を包む中、谷繁氏はテーブルに置かれたミットを手にした。プロとしての心得、生き抜くすべから、技術にも踏み込んだ「捕手論」へとスイッチが切り替わった。(つづく)
<谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)>
◆生年月日 1970年(昭45)12月21日
◆出身地 広島
◆出身校 江の川(現石見智翠館)
◆身長と体重(プロ1年目時) 176センチ、77キロ
◆高校通算本塁打 42本
◆甲子園成績(2年夏、3年夏に出場) 4試合で15打数4安打、打率2割6分7厘、0本塁打、2打点。
◆主な記録 史上最多の3021試合出場、27年連続本塁打のギネス世界記録、ゴールデングラブ賞6回、ベストナイン1回
◆日本代表歴 第1回WBCに出場
<松尾汐恩(まつお・しおん)>
◆生年月日 2004年(平16)7月6日
◆出身地 京都
◆出身校 大阪桐蔭
◆身長と体重(ドラフト時) 178センチ、78キロ
◆高校通算本塁打 38本
◆甲子園成績(2年春から4季連続出場) 11試合で39打数15安打、打率3割8分5厘、5本塁打、14打点。
◆主な記録 3年春のセンバツ優勝
◆日本代表歴 中学3年時にボーイズ世界大会に出場、高校3年夏にU-18W杯に出場
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