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結局「個人の負担増」なのか…復興特別所得税の転用は所得税の増税 問われる岸田首相発言の整合性:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

岸田文雄首相

岸田文雄首相

 政府は14日、大幅に増やす防衛費の財源として、東日本大震災の復興特別所得税を転用する素案を与党税制調査会に示した。他に法人税、たばこ税も増税して充てる。岸田文雄首相は10日の記者会見で「個人の所得税の負担が増加するような措置は行わない」と説明していたが、復興特別所得税の転用は所得税の増税に当たり、発言の整合性が問われる。(近藤統義、山田晃史)

 首相は防衛力増強に向け2027年度以降に毎年度4兆円が必要になるとし、このうち1兆円強を増税で賄う方針を示している。14日午前の自民税調の幹部会合は素案について大筋で合意したが、午後の税調小委員会では反対論が続出し、政府・与党は15日も調整を続ける。

 復興特別所得税は所得税額に2.1%を上乗せして課税し、37年までの25年間で約7兆5000億円の復興財源を確保する仕組み。21年度は約4400億円の税収があった。

 素案によると、課税期間を37年から14年間延長し、2.1%の上乗せ税率を半減させる。一方で、防衛目的税を創設し、下げた約1%分を防衛財源に振り向ける。この方法なら当面の所得税負担は増えず、国民は痛みを感じにくい。だが、課税期間が延びるため、負担は長期化。防衛財源分は増税となる。

 法人税は本来の税率を変えずに一定税率を上乗せする「付加税方式」を採用し、所得1000万円相当の税額控除を設ける。自民税調の宮沢洋一会長は幹部会合後、「中小企業の9割は(増税の)対象にならない」と述べた。たばこ税は加熱式たばこを念頭に段階的に引き上げる。

 政府は防衛費を27年度までの5年間で14兆6000億円増やす方針で、増税以外の財源として、歳出改革、一般会計の決算剰余金、防衛力強化資金(特別会計からの繰入金や国有財産の売却収入など)を挙げる。ただ、剰余金や強化資金は一時的な財源にすぎない。さらに、従来は防衛費に充てることを認めてこなかった建設国債を利用する案も政府・与党内にはある。防衛財源をめぐっては、こうした禁じ手ともいえる手法を駆使して、かき集めようとしているのが実態だ。想定通りに確保できるかは不透明で、中長期的にはさらなる増税や将来世代の負担増の懸念がつきまとう。

◆「再考すべきだ」与野党から批判噴出

 防衛費を増額するための財源を巡り、東日本大震災の復興特別所得税の一部を転用する政府案に与野党から批判が噴出している。「個人の所得税」との表現で負担増を否定していた岸田文雄首相に対しても、整合性を問う声が上がる可能性がある。(曽田晋太郎、市川千晴、坂田奈央)

 転用の政府案は14日の自民党会合で正式提示され、出席者から「国民に説明がつかない」「再考すべきだ」などと異論が相次いだ。被災地の福島県出身の菅家一郎衆院議員は会合後、記者団に「(転用は)何が根拠なのか。復興への政権の姿勢が問われる。県民の理解は得にくいと肌で感じている」と不信感をにじませた。

 出席者によると、理解を示す意見はわずかで、反対・慎重論が大勢だったという。防衛費の財源に増税を充てることに賛成する議員からも「復興が遅れないことをよほど明快に説明しないと理解されない」(猪口邦子参院議員)、「筋がいいとは思わない」(石破茂元幹事長)と苦言や注文の声が上がった。

 野党も批判を強めている。共産党の志位和夫委員長は14日、ツイッターで「道理のかけらもない暴走だ」と非難。被災地・宮城県選出の立憲民主党の安住淳国対委員長は11日の記者会見で「驚愕きょうがくした。復興費用を防衛費に充てることは全くの目的外使用で、本末転倒だ」と怒りをみせた。

 所得税の負担増を否定した首相発言に関し、政府高官は「どういう趣旨で発言したのか聞いていない」と話すにとどめた。

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