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一緒に食べる楽しさ伝えたい 「特別じゃない日」の作者に聞きました - withnews

何げない「日常」を大切に描いてきた漫画家の稲空穂さん。発売されたばかりの単行本3巻には、お弁当屋さんを営んでいた祖母や母から受け継いだレシピも掲載されています。「調味料は目分量」の祖母が唯一、きっちり計量して作っていたのは――。「ごはん」をめぐる思い出を聞きました。

作品をまとめた単行本3巻「特別じゃない日 一緒に食べよう」は、16日に発売されました。サブタイトルからもわかるように、テーマは「ごはん」。採録されたエピソードには、食事やお茶の風景が登場します。

原点は、稲さん自身の「一緒に作る、一緒に食べる」経験です。

近所に住む祖父母はお弁当屋さんを営んでいて、祖母がお弁当のおかずを作るのを見て育ちました。夕飯を一緒に食べることも多く、稲さんも山芋をすったり、カツオ節を削ったりして準備を手伝いました。

「ひとりで自由に食べるのも好きですけれど、誰かと一緒に食べると2倍3倍おいしいですよね」

単行本で紹介しているレシピは、風邪をひいたときに母が作ってくれた雑炊や、祖母から教わったチャーシューやメンチカツなど計7品です。

2年ほど前、病気で手術をしたことをきっかけに、祖母は自分のレシピを稲さんに伝えはじめました。
 
「『いま教えなきゃ』と思ったんじゃないでしょうか。幸い元気にしていますが、終活のような感じかもしれません」

ある日、稲さんを台所に呼ぶと、「こうやって作るから、スマホで動画とっとき」と料理を作り始めました。レシピノートもありましたが、書かれていたのは材料だけで、分量や詳しい手順の記載はありません。

そこで、稲さんは手順を撮影しながら、祖母が調味料を目分量で加えるのを見て、「いまのは大さじ1ぐらいかな?」と手元にメモ。自宅に帰って試作し、レシピを完成させていきました。

採録されているエピソードの一つ「あの日の味」に登場する黒豆も、祖母の味。もとはお弁当に入れていたおかずの一品で、黒豆だけは、失敗しないように調味料の分量をきちんと量って加えていたそうです。

豆を煮汁に12時間浸し、それから2時間煮れば、甘くつやっと仕上がります。

2021年9月にSNSに黒豆の作り方を投稿したところ、作った人たちから「おいしくできた」と反響があったそうです。

「掲載したレシピはどれも、大切な人から伝授されたり、大切な人を思って私が考えたりしたもの。読んでくださった方に一緒に食べる楽しさが伝わればうれしいし、私も大切な人と一緒に食べる喜びを忘れずにいたいです」

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